太陽が午後へと辿り着いた頃だった。

僅かな雲を配置した青空が心地良い大気と共に世界を包んでいた。

それはこの地域では比較的ありふれた、そして少しばかり”違った日”のことだった。

 

「えー!?ど、どーなんってんのそれー?」

 

溌剌とした一人の幼い少女の声が響いていた。

年の頃は5~6歳程度、同じ年頃程度の数名の子供達の中から高くあげた声だった。

そして、周囲の喧噪と何処か似た響き故にほとんど注目を得られなかった声だった。

 

「ねっ、ねっ、ねっ、つぎは?つぎはどんなの?」

 

急かすような、そして期待と楽しみしか感じられないような声を続けていた。

そしてやはり、それも周囲の喧噪と同種の・・・

聞く者にも笑みを呼ぶような、この集落で現在行われている『祭り』に相応しい声だった。

 

(ドコダ?)

(アレカ?)

(アレダ!)

 

それは特に何かを”祀る”ためのものではなかった。

以前からこの集落、いや世界全体を覆っていたかも知れない重苦しい雰囲気・・・

それらを一時忘れ、同時に”生きる勢い”を得るために人々が自主的に始めたものだった。

 

(ハジメル”ギシキ”)

(タダシキ”ギシキ”)

(ワレラノシンセイナル”ギシキ”)

 

まるで仮装パーティの如く多種多様の色々な衣装を纏っている者がいた。

歌を歌う者、踊りを披露する者、音楽を奏でる者、芝居を行う者らが集っていた。

色彩を華美させた菓子を売る者、手作りの玩具を売る者、それ以外の品物を売る者も居た。

 

(エラバレタ”ヒメ”)

(ミズカラノゾンダ”ヤク”)

(ソシテ”ニエ”タルサダメノモノ!)

 

その中に先程の幼子を含む子供達の目を釘付けにする小さな出店があった。

やはり先程声を上げた幼子と同様、子供達の驚きと好奇心の目を向けさせ続けていた。

それはこの周囲の状況ではやはり普通の、単純な”手品”を披露している者の前だった。

 

(”ゴエイ”ハドコダ?)

(ワレラヲハバム”ゴエイ”ハドコダ?)

(エラビシ”ゴエイ”ハアノソバニイル!)

 

 

 

・・・『何か』が向かっていた。

この場の雰囲気とはまるで別次元の異様な気配を放ち続けながら向かっていた。

だがそれは”異質”・・・まるで周囲に背景映像の如く認知されぬままに向っていた。

 

(オワリダ)

(コレデコンカイノ”ギシキ”ハオワリダ)

(コレデワレラノ”アンネイ”ハヤクソクサレタ)

 

足早に迫り始めていた。

その雰囲気に気付いたように隣の子供に腕を絡めた、あの幼子へと迫っていた。

そして全身に纏う薄汚れたローブから錆び付いた短剣の光沢を覗かせ・・・そして!

 

 

 

・・・

 

 

 

・・・子供達は気付かなかった。

いや、子供達どころか喧噪を行き来する人々もその”瞬間”に気付く素振りさえなかった。

正に”異様”・・・その瞬間が取るに足らない光景の如く、感心を払う様相すらなかった。

そう、その瞬間を目の当たりに”出来た”あの幼子以外と言えば・・・

 

 

 

「・・・お前が今度の『護衛役』だったのか・・・」

 

 

 

それは・・・いつの間にか”そこ”に存在していた者の声だった。

やはり異様な気配を薄汚れたローブの下から長剣の光沢と共に醸し出す者だった。

そして、その瞬間及び地に伏す3つの屍に感慨無き様相にて片手をゆっくりと上げながら、

喧噪に潜んでいた十数名の”同種の輩”を視界に呼び寄せた声の主と・・・そして・・・

 

 

 

「あはは。まあこんなこともあるわよ・・・少しはウケて頂けたかしらぁ?」

 

 

 

一人の女性だった。

この場にそぐわぬような戯けた口調の主だった。

先程から披露していた『手品』に相応しい『魔法使い』の衣装を纏う者だった。

 

それは腰まで伸びた黒髪と、その口調に相応しい笑顔を有する20代半ばの東洋人だった。

そして同時に、その者共どころかこの異常事態にも怯みの欠片も伺えぬ程の黒い瞳と共に、

その片腕で迫る3つの殺意を瞬技で屠った『拳銃』を微動だにせず構え続ける者だった!

 

 

 

 

 

 

『仮説雑貨商』5周年到達記念短編

 

JUDGE OF CARNIVAL

 

BY:K-U

 

 

 

 

 

 

・・・斯様な理由により其方を当日儀式の主とする・・・それに異存無きや?・・・

 

・・・よくわかんないけど”おひめさま”やればいいんでしょ?うん、いいよー・・・

 

 

 

迫る!

その数3!

異形の殺意を剥き出しにしたまま正面から迫る!

 

撃つ!

その黒色の衣装を翻しながら女性が瞬時に引き金を引く!

直後!まるでその軌跡を予想したかの如き射線が新たな屍を生み出す!

 

「!!!???きゃぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

悲鳴!

それはその存在のおぞましさを感じた幼子の叫び!

そして左右から迫る新たな4つの殺意にまるで呼び水になったが如き合図!

 

庇う!

安堵を与える暖かき人の温もりと共に女性が幼子を片腕に抱く!

 

同時!

残る片腕から放たれた銃弾が精密無比の死手として4つの異形を屍に変える!

 

・・・其方は”護衛役”を一名選出せよ。その者は其方の知る誰でも良い・・・

 

・・・むつかしくてわかんないけど、おともだちもいっしょでいいってこと?・・・

 

・・・護衛役は如何な手段も認めるが、最終的に其方と残りし者が抗うを承知せよ・・・

 

・・・やっぱりよくわかんないけどそーゆー”げき”ね。うん、なんかたのしそう・・・

 

引く!

残る8つの殺意が一斉に間合いを取るが如く後ろへ下がる!

 

同時!

まるで動じる素振りも見せずに女性が弾丸の交換を驚異的な技量で終える!

 

瞬間!

もはやそれだけで人とは呼べぬ程の距離から異形共が一点に向かって跳躍する!

 

・・・では其方の意志の確認はこれにて終えたこととする。当日までに準備をせよ・・・

 

・・・うん、わかったよー、じゃ、ばいばーい、おかしありがとねー・・・

 

直後!

撃つ!

まるで舞踊!

瞬間的に前方視界全ての4つの異形へ弾丸を撃ち放つ!

そして間髪入れずに女性特有の柔軟さで後方にそのまま反り返る!

 

撃つ!

反転した視界の右半分を!

そして瞬時に片手に移した拳銃で最後の殺意を・・・

 

 

 

・・・

 

 

 

「うぇぇぇぇん!!!ごわいよぉ!もぉやめてよぉぉぉ!!!」

 

異形の沈黙の中で幼子が叫んでいた。

まるで火がついたような泣き声が辺りに響いていた。

自分を柔らかく包む女性以外には届かぬ状況下で必死の叫びが響いていた。

 

「・・・これ程の技量とはな・・・こ奴らでは抗うことすら適わぬわけだ・・・」

 

やはり平然とした口調だった。

全ての手駒を失ったとは思えぬ程の口調だった。

そしてやはり、その無垢の叫びすらまるで聞こえないような冷徹な口調だった。

 

「あらぁ~、お褒めの言葉を頂けるとは意外ねぇ~」

 

やはり呑気そうな声が答えた。

その腕に強く抱いた脅えきる幼子を安堵させるような口調だった。

そしてやはり、いや、その挑戦的な瞳を更に強めながらの口調だった。

 

「・・・私が褒めているだと・・・ふん、心にも無い戯れ言を。」

「あははー、心なんか無さそうなお方の言葉だから意外だと思ったんだけどぉ~」

「小賢しい口だな・・・だが、今の技量ならばその程度は不思議ではないか・・・

ところで確認するが、お前はこの儀式のルールは知っているのだな?」

「るぅるぅ?そぉねぇ~、あなた達がこの子に説明した大体なら聞いてるわよぉ~・・・

なぁんかわざと”解りにくい言葉”で説明したってことも合わせてねぇ~」

 

陽気な口調のままに女性はそう答えた。

つい先日、この地に知人を尋ねた際に知り合っただけの幼子を抱きながらそう答えた。

少女の拙い説明を解析し、なおかつこの場に立つことを承知したままの表情でそう答えた。

 

「・・・いずれにせよその子供は自ら我々の儀式の”贄”たる姫役となることを承知し、

そしてお前もそれを承知で護衛役として私の目前にいる・・・今更それは変わらない。」

「そぉいえばそぉねぇ~・・・あははー、私も引っ掛かったのかしらぁ~」

「そう、姫役は全てに抗えるが護衛役では兵士役まで、姫役を屠る”騎士役”には抗えぬ。

つまりそういう流れの儀式故、如何なる手段を講じてもお前は私に抗うことは出来無ぬ。」

 

淡々とした口調だった。

目前の女性の糾弾すら意に介さぬ様相だった。

いや、それは何処か”解り切っている”故の退屈めいた響きすら感じさせる口調だった。

 

しかし・・・

 

「・・・ひとぉつお伺いするけどぉ~・・・ホントに私は何をしてもいいのかしらぁ?」

「如何なる武具を用いても如何なる罠を巡らそうとも構わない・・・所詮結果は同じだ。」

「そぉなのぉ~・・・それじゃ私はこぉさせて頂くことにするわぁ~」

 

その言葉と共に女性は背を覆うマントでしがみつく幼子の全身を包んだ。

それは目前の者と同様、この場を目にする者に虚しい抵抗を感じさせるだけの行為だった。

 

「・・・」

 

・・・その筈だった。

そう、確かに浮かんでいただけだった。

対峙する者の目にはそのマントに幼子のシルエットが確かに浮かんでいた・・・だが!

 

「!?」

 

その瞬間、その様相にあからさまな驚愕がその表情に浮かんだ!

そう、そのマントの下で銃声とおぼしきくぐもった衝撃音が己の聴覚に響いた時に!

そしてマントに地面に崩れ行くシルエットがあからさまに浮かぶのを視覚に捉えた時に!

 

「ば、馬鹿な!護衛役がだと!?こ、これでは儀式が・・・わ、私の役が・・・」

「・・・どぉかしたかしらぁ?私はるうるどぉりにさせて頂いただけだけどぉ?」

「ふざけた・・・ふざけたことを・・・おのれぇぇぇぇぇ!!!」

 

直後!

女性に迫る!

先程の者とは比較にならぬ程の殺意で迫る!

激高さながらの表情と共に長剣を振りかざしながら迫る!

雑然とした周囲を縫いながらとはとても思えぬ速度で一気に迫る!

 

・・・?

 

瞬発!

広がる漆黒!

間髪入れず女性が自身のマントをひるがえす!

その下の、左手で握った手品用の”音だけの玩具の銃”を見せながら!

その下の、元気そうに動く幼子の足をスカートの下から僅かに覗かせる姿を見せながら!

そして、そして己自身の惑いで”儀式を外れた”愚かな殺意へと本物の銃口を向けながら!

 

・・・この間・・・実に1.7秒・・・

 

 

 

そして・・・・

 

 

 

人々が行き交っていた。

それは先程からと変わらぬ光景だった。

昂揚と開放感を滲ませる喧噪の中をそれぞれがそれぞれのままに行き交っていた。

 

・・・そう、その傍らを通り過ぎた殺意に気付かずに。

その悪しき殺意を屠った、自分達を縫うように撃ち響いた銃声に気付かずに。

その後、足下に伏した幾つもの屍、それがかき消すように消えたこと、それから・・・

 

「・・・おわったの?ねえ、おねえちゃん、もうおわったんでしょ?」

「・・・ごめんなさぁい・・・多分まだと思うわぁ~」

「!いや!わたしもういや!こんなこわいのもういやぁぁぁ!」

 

その泣き叫ぶ幼子の悲鳴にも、やはりまだ気付かないままに・・・

 

 

 

「・・・愚かな・・・斯様な手法にまたも無様に翻弄されるとは・・・」

 

 

 

そんな声が二人の前から聞こえてきた。

先程の者共と同様に視界に現れ、醜く嗄れた表情そのままの声を放つ小柄な老人だった。

そしてやはり先程の者共と同様、そんな二人に憐憫の欠片も感じさせない様な者だった。

 

「・・・どちら様かしらぁ?」

「あのおじいちゃんだよ!わたしにおかしをくれて”げき”のはなしをしたの!」

「そぉだったのぉ~、それじゃこの”ごっこ”はもぉ終ったって言って頂けるのねぇ?」

 

その老人に向かって女性は相変わらずの口調でそう尋ねた。

ただそれは懇願というより幼子を守り抱くそのままの強さを響かせるような口調だった。

 

「其方が先程用いた手段は100年程前”水晶の女王”が用いたと同様だ・・・

なお、その時は姫役が本当に屠られ、我らも我を除き壊滅した故、儀式は継続不能とした。」

「・・・あの子なら確かにそれぐらいはやったわねぇ~・・・

でもぉそれならこの子が生きてるってどぉして言ってあげなかったのかしらぁ?」

「私はあくまで”見届け役”故にそれは儀式に反する・・・

しかしながら以後かような事態の時に備え、我は”代役”を兼任可能とした。」

「・・・それじゃ私達はまだこの”ごっこ”を続けさせられるわけねぇ?」

 

その様な会話が続いていた。

行き交う雑踏の中でかき消されてもおかしくないような静かな響きだった。

だが、少なくとも二人には緊張の静寂に響く会話以外に聞こえないものだった。

 

「この儀式は精神も魂もお主らより上位なる存在の為に行われているものである・・・

故に下位なるものはその”種”を尊ぶべきが定めであろう。」

「・・・誰がそんなこと決めたのかしらぁ?」

「しかしながら我らが求めるのは砕かれし希望、滅した未来、無意味な命・・・

それらが紡ぐ其方らの言う”不幸の感情”の反作用といった僅か故さほどもなかろう。」

「・・・それじゃあなたが自分自身の身でそれを紡いだら如何かしらぁ・・・

そぉよぉ・・・私達下位の者よりよぉっぽどその”種”の役に立つと思うけどぉ?」

 

変わらぬ口調のままに女性はそう口にした。

淡々と語る老人に向かって相変わらずの口調でそう言葉を放った。

だが、それは同時に柔和な瞳にまごうことなき”怒り”を満たしながらの言葉だった。

 

「儀式の流れは既に変更出来ない。その幼子が承諾した時点で全ては始まった。」

「・・・さっきも聞いたけどぉ、その内容を理解出来るかってのはどぉなのかしらぁ?」

「・・・お前程の者が護衛役を選ぶと同様、たとえ未熟とて理解を示さんとは限らん。」

「・・・この子の評価についてのみ嬉しく思うわぁ~」

 

やはり感情の欠片も示す様子は無かった。

もはや女性にも、そして恐怖で声も出せない幼子にも感心すら見せぬ様子だった。

そう、何処からか発現させた骨董さながらの”先込め銃”をその手に構えただけだった。

 

「其方に再度告げる。我は今より騎士役として姫役たるその幼子と勝敗を決す聖戦を行う。

そして我が勝ちし時、護衛役たる其方も如何なる手段を用いても儀式の流れに従い滅びる。

だが我が”姫”に敗れし時は我らは滅び、其方達は儀式から解放される・・・以上だ。」

 

そう口にすると老人はゆっくりと歩を進め出した。

”問答無用”を絵に描いた様な態度そのままに二人にゆっくりと歩み寄り始めた。

それは文字どおり殺意の使い、この状況を司るに相応しい重圧ささえ感じる姿だった。

 

だが・・・

 

 

 

「・・・確か”護衛”はどぉんな手を使っても良いって言ったわよねぇ?」

「・・・お、おねえちゃん?」

 

その言葉と共に女性は柔らかく幼子をその身から離した。

そしてやはり凛とした姿勢のままに迫る殺意に立ちはだかるように前方へ移動した。

 

「それから”お姫様”はどぉんな相手にも抗えるってことになっていたわよねぇ?」

「・・・」

 

やはり答えぬままだった。

その女性の言動すら知覚出来ぬが如く老人は歩みをそのままに近づいていた。

 

「一応私もあなたに告げさせてもらうけどぉ~・・・

護衛役を引き受けるに当たって二つほどじょぉけんを付けさせて頂いたのぉ~」

 

そんな老人に構う様相も見せずに女性は言葉を続けた。

それは、たとえ敵わぬまでもその結果の瞬間まで安堵をもたらすに足る態度だった。

 

「一つはさっきお見せした手品の相方をやってもらうこととぉ・・・

そしてもぉ一つは・・・あははー、じゃ、今の気持ちを聞かせて頂けるかしらぁ~」

 

その言葉は真後ろの幼子にも届けた言葉だった。

それはまるで耐えられない程にこの場に満ちた重圧に抗う光明のような響きだった。

一瞬の沈黙・・・しかし怯えを振り切るように幼子はその一言を口にした。

 

 

 

「こ、こんなのもういや!おひめさまもういや!かわって!もういやだからかわって!」

 

 

 

「おおけぇい!」

 

 

 

・・・しばしの時間を要していた。

それは朽ちかけた老人に相応しい緩慢ささながらだった。

だが、それはまるでその瞬間巻き抜けた疾風に誘われたような変貌に至る様相でもあった。

そう、その”言葉の意味”を己の武具が弾き砕かれた衝撃と共に理解した驚愕へと!

 

「ふ、不遜な・・・その行為がどれだけこの星の価値を貶めると思っているのだ!」

 

・・・もう、そんな姿しかなかった。

そんな言葉を吐きながら後ずさりを始めただけだった。

先程までの態度が偽りの如く、地に腰を付けた惨めな姿が銃口の向こうにあるだけだった。

 

「ひ、人より遙かに高潔な存在だぞ!この星にどれだけの損失を招くと思っているのだ!」

 

もはや言葉しか抗う術が無いようだった。

先程”姫役”を承諾した瞬間同様に拳銃を構え続ける女性に対してそれだけだった。

そう、あからさまな怯えの表情と共にその場から逃げ出そうとしているだけだった。

 

「わ、我らは佇む者、深淵なる思考する者、そして高潔なる者ぞ!そ、それを・・・」

「ひとぉつお伺いするけどぉ~・・・今まで糧にした人達の言葉をご存じかしらぁ?」

 

その言葉と共に女性は老人へと歩みを始めた。

それは確かに相変わらずの口調での言葉だった。

だがそれは老人の愚話をもはや聞く気も無い意志表示の一喝の如き響きを有していた。

 

「な、なんだと・・・そ、そんな些細など・・・や、やめろ!やめろ!やめてくれ!」

 

・・・そんな叫びを老人は撒き散らした。

もはや先程とは別人と呼んでも構わないような変貌ぶりだった。

それはやはりこの老人も”人”では無かったことの証明の一つであろうか?

 

いや、それはもはや気にすることでもないだろう。

たとえ彼等が異界の住人であり、これがその種の存続を計る重大な”祭事”だとしても、

その”贄”として我々の生命を欲した以上、理解の必要すらないであろう。

そう、知ったところで・・・そんなこと・・・

 

 

 

「・・・” Get rid of...a harful insect! ”」

 

 

 

・・・銃声。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そのカッコでお姫様?なによそれ?大体そんなもん今更私達珍しくないでしょ!」

「そぉいやそぉだったわねぇ~・・・それじゃそろそろこぉたいしようかしらぁ?」

「・・・もうおひめさまいや・・・わたしもまほうつかいがいい・・・」

 

そんな会話が集落の片隅にて行われていた。

古着を中心とするこじんまりとした店舗の中だった。

20代半ばの女性二人による、傍らに幼子をおいた大人同士の会話だった。

 

「人が折角これ以上似合う格好ないって思ったのに・・・お気に召さないとはねえ。」

「あらぁ~、だったら今度は私がお店番ねぇ~・・・代わりに騎士なんて如何かしらぁ~」

「・・・わたし、きし、きらい・・・」

「私はあんな人前でコスプレなんか嫌だって言ったでしょ!大体今度も勝手に入ってきて、

勝手に寝てたんだからその程度はバイト代ってことで当然よ!」

「あははー、結構楽しいわよぉ~」

「じゃ、いっそ学生服はどう?あんたの分はまだ取ってあるし、親父連中にも受けるわよ。」

「はらぁ~まだアレあったのぉ~・・・でももぉ私着られないと思うんだけどぉ~」

「・・・その服のときにサイズ計ったでしょ・・・悔しいことに問題なかったわよ・・・」

 

 

 

そんな感じで続いていた。

それは何処か、今も行われている”祭り”、その楽しげな喧噪に似た響きの会話であった。

そう、その場にいる3人は間違いなく”祭り”の客であり参加者であった。

 

 

 

 

 

 

もはや日常の住人以外の何者でも・・・確かに無かった・・・

 

 

 

 

 

 

END

 

 

 

 

 

 

ご意見、ご感想等、何かございましたら掲示板まで。